こんにちはともです。
今回はLogの仕組みや撮影方法、編集方法について解説します。
動画の撮影方法について調べていくと必ず出てくるLog撮影は、映像の質を高めてはくれそうだけど、使い方が難しそうで、なかなか手を出せないという方も多いと思います。
実際僕もLogについて調べるたびに新しい情報が出てくるし、単語や仕組みも難しいので本当にとっつきにくい分野だなと感じています。
ただ、苦労して勉強した甲斐もあってLogの撮影や編集もなんなくできる状況にはなっています。
そんな経験を活かして今回はなぜLogで撮るのか、Logの仕組み、撮影方法、編集方法まで解説するので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。
ちなみに今回の記事は動画にもしてあるので、文字より動画の方が良いという方はこちらをご覧ください。
なぜLogで撮るのか?
ということでまずは、なぜLogで撮るのかについてお話しします。
Logで撮る理由はざっくり言うと広いダイナミックレンジで撮れるからなので、まず「ダイナミックレンジ」から理解する必要があります。
ダイナミックレンジは映像の明るさの範囲のことで、これが広いと暗い部分から明るい部分までを一度に撮影することができます。
逆にダイナミックレンジが狭いと白とびや黒つぶれで色情報を失ってしまうので、そうならないようにLog撮影するわけです。
ただ当たり前ですが、通常の撮影モードでもLog撮影でもカメラの性能は変わりません。
本来ならLogくらいのダイナミックレンジで映せるのに通常の撮影モードではそうしない理由があるんです。
それは、撮影後の映像を表示したり送ったりする方に明るさの限界があって、そっちの限界に合わせているからです。
この限界を無視して記録しても送ったり表示できなければ意味がないので、やむなくダイナミックレンジを狭めているわけです。
しょうがないとは言え、やはりカメラの広いダイナミックレンジを十分に活かして撮影したいので映像業界の試行錯誤を経てLog撮影というものができたわけです。
Logの仕組み
ここまで、なぜLogで撮るのかについてお話したので、続いてLogの仕組みについてお話します。
通常の撮影方法だとカメラの広いダイナミックレンジをあえて狭めている現状なので、カメラが捉えた映像をそのまま記録すれば良いだろうということで生まれたのが「RAW撮影」です。
RAWは「生」という意味で、撮ったそのままの情報ということです。
静止画のRAW撮影はかなり一般的になっていて、とりあえずRAWで撮れば白とび黒つぶれしにくいので、撮影後の調整で良い塩梅に仕上げられるというものです。
ただRAWファイルは見た目上そこまで重要ではない部分の色情報も全て含んでいるのでかなり大きなファイルサイズになってしまいます。
見た目上重要じゃない部分というのは例えば、ハイライトの部分です。
真っ暗な部屋に1本ロウソクがついたり2本ついたりすると明るさは大きく変わる感じがしますが、100から110になったり1000から1100に変わっても違いはあまり感じないと思います。
人の目は明るくなればなるほどその変化を感じづらくなるという性質を持っているので、明るい部分の情報を全部しっかり記録しても役に立たない可能性があるんです。
この暗い部分から明るい部分まで均一に色情報を持っていることを、階調特性が直線なので「リニア」と言います。
リニアで情報が豊富なのは良いことではありますが、ファイルサイズの効率で考えると良くないとも言えそうです。
そして、RAWよりもファイルサイズを抑えた効率的な撮影方法こそがLogです。
Logというのは高校で習う対数曲線が名前の由来で、RAWのようなリニアな階調特性ではなく、重要な部分に多くの階調を割り当てて、そうでないところには少ない階調を割り当てた曲線になっています。
これによって、見た目の印象を損なうことなく、ファイルサイズも抑えてダイナミックレンジも確保することができたわけです。
階調特性についても簡単に解説しておくと、例えばグラフで横軸を映像の明るさ、縦軸は与えられる情報量とします。
明るさを大まかにシャドウ、ミッドトーン、ハイライトに分けた時に直線、つまりリニアだとそれぞれの明るさに対して均一に情報量が与えられます。
しかし例えば、上に膨らんだような曲線だとシャドウには多くの情報を与えられますが、ハイライトの情報が少なかったりします。
そして先ほどお伝えした通り、見た目上重要でない部分には情報を少なく割り当てれば良いのでLogではこういった曲線を使ってファイルサイズを抑えられているというわけです。
ただ冒頭でお話したとおり、表示や送信を考えたら本来ダイナミックレンジは狭める必要があるわけで、LogやRAWデータはそのまま使うには向いていません。
撮影後の編集で調整が必要なので後ほど詳しく解説します。
Logの撮影方法
ここまでLogの仕組みについてお話したので、続いてLogの撮影方法についてお話します。
Logの撮影方法については一番気になるポイントだと思うので3つの項目に分けてお話します。
- bit深度とクロマサブサンプリング
- 露出設定
- モニタリング方法
bit深度とクロマサブサンプリング
ではまずbit深度とクロマサブサンプリングについてお話します。
Logの仕組みのところでお話したとおり、Logは階調特性がリニアではないので、色情報が少なく割り当てられている箇所もあります。
そういった箇所は場合によっては色情報が足りなくてノイズやバンディングを起こしてしまう可能性があります。
これを防ぐために、Log撮影ではより緻密な色情報を持たせる方が安心です。
その色情報に係るのがbit深度とクロマサブサンプリングです。
bit深度は階調そのものと言って良いもので、映像の明るさをどれだけ細かく分けるかというものです。
例えば真っ黒を0真っ白を100とした時にこれを、50を境に2つに分けるよりも25刻みで4つに分けた方が情報は細かくなります。
さらに8、16、32階調と細かく分けたほうが階調は滑らかで緻密になっていきます。
通常の撮影では「8bit」つまり2の8乗の256階調あれば十分と言われますが、Logではより緻密な方が良いので「10bit」つまり2の10乗の1024階調を使うのが一般的です。
これでノイズやバンディングを抑えやすくなります。
そして色情報の豊富さにはクロマサブサンプリングというのも関係してきます。
クロマサブサンプリングは色情報の圧縮方法のことで、これがあるから膨大な情報がある動画も低いサイズに抑えることができています。
人の目は、色の変化よりも明るさの変化に敏感という特性があるので、明るさの情報を残して色の情報を減らせば効率的にファイルを圧縮できます。
圧縮の種類は「4:4:4」「4:2:2」「4:2:0」などがあって、数字が大きくてバランスがとれている方が圧縮は少ないと思ってokです。
見るだけなら4:2:0でも十分だと思いますが、Logのような細かい色情報が必要な場合は出来るだけ圧縮されていない方が良いです。
求めるクオリティによっては4:4:4を使うこともあると思いますが、RAWみたいにファイルサイズが膨大になってしまうので、とりあえず4:2:2あれば問題ないと思います。
bit深度とクロマサブサンプリングについてまとめるとLog撮影では4:2:0 8bitなどより4:2:2 10bitを選んだ方が良いということです。
僕も4:2:2 10bitを基本にしてますが、YouTubeなんかでは4:2:0 8bitでも大きな違いは感じづらいように思うので、4:2:2 10bitで撮れない機種もまず実際に撮影編集までしてみるのをオススメします。
露出設定
続いて露出設定です。
Logの撮影では露出の考え方が結構難しいです。
通常の撮影ではとりあえず露出補正+-0つまり「標準露出」で撮れば大きな間違いはないところなんですが、僕はLogの撮影では+1.7か2.0あたりで撮影することが多いです。
なぜならLogで撮影した映像はシャドウ部分にノイズが乗りやすくて、編集で後から明るくしたりするとノイズが思いっきり目立つからです。
以前検証もやっていて、露出-1.7で撮影した映像を編集で明るくする場合と露出+1.7で撮影した映像ではノイズ量によって圧倒的な画質の差が出ました。
どちらもISO102400で撮影しましたが、露出+1.7の方は意外と綺麗に撮れて驚きました。
極端な検証ではありましたが、とにかくLogは露出不足で撮ってはいけません。ISO感度を上げてでも十分な明るさを確保する必要があります。
念の為お話しておきたいのは、露出オーバーで撮るということはその分ハイライト側で白飛びはしやすくなるということです。
シャドウもハイライトも均一にダイナミックレンジを確保するならやっぱり標準露出あたりが良いんだろうとは思います。
ただこれまでの経験上、露出オーバーでとってもLogならそうそう白飛びはしないし、それよりも編集でノイズが出ることの方が圧倒的にデメリットなので僕は基本露出オーバーで撮影します。
露出オーバーを意識しつつ、もう1つ意識することがあります。
それは「ベースISO感度」です。
ベースISO感度はカメラがノイズを抑えつつ広いダイナミックレンジも確保できる、画質的に最も有利なISO感度のことです。
ベースISOはどのカメラにも1つはあって、動画機では2つ用意されていることもあります。
Panasonic機では「デュアルネイティブISO」と言われたりSONY機では「デュアルベースISO」と言われたりします。
ベースISOから出来るだけ離さずに撮ることで良い画質で撮影することができます。
例えばデュアルベースISO800と4000のカメラで夜景を撮影する場合、ISO3200である程度露出を確保できそうでも、すぐ上にベースISO4000があるからそこまで上げた方が画質が良いという感じです。
ただベースISOを気にしすぎて例えばISO6400必要なのに、ベースISO4000の露出アンダーで撮ったりすると編集で明るくする必要があってむしろノイズが目立つことになります。
可能であればベースISOで撮ったほうが良いですが、それに縛られて露出不足には絶対ならないようにしましょう。
F値にそこまで縛りがなかったり、照明で露出を調整できるならベースISOにこだわっても良いかもしれません。
ベースISOはカメラによっては公表されてない場合もありますが、一応調べておいて損はないと思います。
モニタリング方法
続いてモニタリング方法です。
Logで撮影した映像はこれまでお話したとおり、そのまま表示するには向いていなくて、表示してもコントラストが低い眠い映像になります。
カメラのモニターにもこの状態で表示されるわけですが、これでは露出やホワイトバランスの調整がしづらいです。
なので、カメラにはLogの映像にコントラストや色をしっかり持たせて表示する機能がついています。
SONYカメラだと「ガンマ表示アシスト」という名前で、Canonでは「ビューアシスト」という感じで各社名前が違うと思います。
この機能を使えば露出やホワイトバランスの調整がしやすくなるので活用してください。
あと、編集で使う「LUT」というファイルをカメラに取り込んでモニタリングする機能もあったりしますが、これは使える機種が限られると思います。
モニタリングの精度をより高めたいという方は使ってみると良いと思います。
Logの編集方法
ここまでLogの撮影方法についてお話したので、最後にLogの編集方法についてお話します。
Logの編集方法も項目を分けてお話します。
- カラースペースの変換
- LUTの適用
- カラーグレーディング
の3つです。
カラースペースの変換
ではまずカラースペースの変換からお話します。
カラースペースというのは「色域」とか「色空間」とも言ったりしますが、最初にお話したダイナミックレンジの話に関わりが強いです。
LogやRAWではない、通常の撮影で使われる、表示や送信に適したダイナミックレンジをスタンダードダイナミックレンジ、「SDR」と言います。
それに対して最近よく目にするようになった、暗い部分から明るい部分までしっかり表現できる映像はハイダイナミックレンジ、「HDR」と言います。
HDRはSDRと比べて輝度が高い部分まで表現できる代わりに、それに対応するモニターなども必要になるので、まだ多くのメディアやプラットフォームはSDRで運用されていたりします。
SDRとHDRの映像を見比べた時に、明るさの違いはもちろんあるんですが、それより色の違いを感じやすいように思います。
これがカラースペース、色域の違いです。
HDRで明るい部分が表現できるということは、明るさに応じた色も使える幅が広がっているわけで、逆に言えば広い色域なくしてHDRはあり得ないということです。
Log撮影した映像はダイナミックレンジが広いのと同時に色域も広いので、最終的に作る映像の規格に合わせて色域を変える必要があります。
大きく分ければSDR用の色域なのかHDR用の色域なのかということです。
SDRの映像を作るなら「709」という色域に変換して、HDRなら「2020」に変換すればokです。
変換の仕方は編集ソフトによって違うと思うので注意してください。
あと、作る映像がSDRなのかHDRなのかによって撮影で選ぶカラーモードも変えた方が良いかもしれません。
SONYのS-Log3でもカラーモードは「S-Gamut3」と「S-Gamut3.cine」というのがあって、HDRを作るなら色域の広いS-Gamut3を選ぶと良いし、SDRならS-Gamut3.cineという使い分けで良いと思います。
LUTの適用
続いてLUTの適用です。
LUTというのは画像や映像の色味やコントラストを調整するファイルのことで、これを使ってLogの眠たい映像を復元するのが一般的です。
1から手動で調整することもできると思いますが、手間がかかるし復元の精度もバラつくのであまりオススメしません。
LUTファイルは編集ソフトに最初から入っているものもありますし、HPなどからダウンロードしてソフトに取り込むものもあります。
そしてどのLUTを使うかですが、とりあえずまずはメーカー公式の無料LUTをあててみると良いように思います。
公式LUTだと綺麗にならないということは全くないし、いきなり特殊なLUTをあてて失敗した時、LUTが悪いのか自分の編集方法が悪いのかわからなくて混乱する方もいそうな気がします。
公式LUTなら色やコントラストの極端な調整は入らないと思うので、まず間違いなくLUTをあてられるようにして、そこからカラーグレーディングも加えてみたりして感覚を掴んでから次のLUTを探してみると良さそうです。
カラーグレーディング
LUTを当てたらそれで完成ではなくて、そこからカラーグレーディングをして仕上げていきます。
LUTはあくまでも一定の基準に合わせる感覚で使って、そこからコントラストを高めたり色を転ばせたり色を載せたりして、イメージを整えていきます。
例えばフィルム感を出す調整方法だと、トーンカーブの底を少しだけ持ち上げてマットな印象を出してみたりもします。これは「フェード」という効果です。
あと青色を少しシアン寄りに転ばせたり緑の彩度を落とすとフィルム感が増すように思います。
ハイライトに赤黄色系を載せたりシャドウに青や緑系を載せるとカラーコントラストがついて良いように思いますが、どの調整もほんの気持ち程度にしないときつい印象になりそうな気がします。
色転びや色載せよりも基本調整やトーンカーブ調整の方が映像の印象を左右しやすいと思うので、まずはそこからだと思います。
今回は、Logの仕組みや撮影、編集方法についてお話しました。
簡単にまとめるとLogはカメラの広いダイナミックレンジを活かすための撮影方法で、そのまま表示するには適していないので、LUTを当てたりガラーグレーディングをする必要があります。
撮影では露出やbit深度、クロマサブサンプリング、モニタリング方法に気をつける必要があります。
最終的に出来上がる映像がSDRなのかHDRなのかによってカラーモードも考える必要がありそうですが、ほとんどの方はSDR前提になると思います。
編集では手間をかけず精度も保てるようにLUTを使うと良いですが、その前にカラースペースの確認や変換は間違いなくしておきましょう。
撮影や編集の参考にしてみてください。
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