一眼カメラを買いたいからセンサーサイズについて教えて。APS-Cとかフルサイズとかよくわからない。
センサーサイズについてお悩みなのですね。
確かに、カタログで調べても専門用語だらけでわかりにくいし、高い買い物だから失敗もしたくない。
そんな方に向けて、写真家である筆者がセンサーサイズについて解説します。
この記事を読めば、センサーサイズで困らずにカメラ選びができるようになります。
この記事を書いているのは、写真家兼ライターの「とも」です。
全国を旅しながら風景を撮影したり、旅好きの皆さんに役立つ情報をお伝えしています。
筆者は完全独学で写真を始めたので、カメラ選びもかなり迷いました。
特にセンサーサイズは値段にも性能にも影響するのでかなり悩まされたのを覚えています。
今は違いを理解した上でAPS-Cとフルサイズの両方を持っていますが、これからカメラ選びをする方にはもうちょっと楽して欲しい。
この記事では失敗のないカメラ選びをサポートするべく、少し長いですがわかりやすい内容を心がけました。
記事の最後にはパターン別カメラの選び方も紹介するので、どうぞご覧ください。
ということで今回は「カメラ選びで『センサーサイズ』は重要?APS-Cとフルサイズの違い」というテーマでお話します。
センサーサイズが重要な理由
そもそもセンサーサイズって何?
まずは「センサーサイズとはなんぞや?」というところから簡単にお話します。
センサーサイズはその名の通り、カメラのセンサーの大きさです。
センサーは光を受け取るとても重要な部位。その大きさは規格化されていて、代表的なものは下記の3つです。
- フルサイズ(縦24mm×横36mm)
- APS-C(縦15.8mm×横23.6mm)
- フォーサーズ(縦13mm×横17.3mm)
なんだか覚えづらい名前と数値ですよね。
フィルム時代からこういう名前なので仕方ありません。主流は上記3つだけなのでしっかり覚えておきましょう。(数値は覚える必要ありません)
ちなみに、これより大きい「中判」というサイズもあるし、スマホにはもっと小さなセンサーが使われてます。
意味がわかったところで、センサーサイズが重要である理由をお話します。
理由は『性能・使えるレンズ・値段と大きさ』の大まかに3つです。
理由1 性能が違う
センサーサイズが重要な理由1つ目。
センサーサイズによって次の性能が変わります。
- ボケ量
- 画素数
- 明るさ範囲(ダイナミックレンジ)
- 画角
それぞれについて簡単に解説します。
ボケ量
センサーサイズが大きいと、写真のボケ量も大きくなります。
「ボケってそんなに大事?」
と思う方もいるかもしれませんが、ボケるということは、被写体を強調できるということ。
周囲がボケると被写体が際立つというわけです。
人の目もボケる量が大きいので、ボケの多い写真はリアルさにも繋がります。
綺麗な『玉ボケ』が撮りたくてカメラを欲しがる人もいるかもしれませんが、それ以外でもボケは必要。
そして、ボケの大きい写真を撮るには大きなセンサーが必要ということです。
画素数
センサーサイズが大きいと、画素数も大きくなりやすいです。
シンプルに、センサーが大きいから画素がたくさん入るというわけです。
しかし逆に言えば「画素自体を小さくすればセンサーが小さくても画素数を増やせる」とも言えますね。
よって、あくまで画素数が大きくなり『やすい』というわけです。
また、画素数が多ければ良いカメラというわけではなく、画素数が少ない方が良い場合もあるので注意。
後ほど解説します。
明るさの範囲(ダイナミックレンジ)
センサーサイズが大きいと、「ダイナミックレンジ」が広くなります。
何やら新しい単語が出てきましたが、大事なので理解しておきましょう。
この『ダイナミックレンジ』を理解するためには逆光の写真を思い浮かべると分かりやすいです。
逆光で撮影した写真は、影が真っ黒で光源は真っ白に写っていますよね。これはダイナミックレンジを超えて起きた「白とび黒つぶれ」というものです。
つまり、ダイナミックレンジとは明るさの許容範囲で、これを上回ると白とびし、下回ると黒つぶれするというわけです。
そして、センサーが大きければ光を多くも少なくも受けられるのでダイナミックレンジが広くなるというわけです。
コップに水(光)は少ししか入らないけど、バケツなら少しでもたくさんでも入れられる。そんなイメージです。
画角
センサーサイズが大きいと、写真の「画角」が広くなります。
画角とは写る範囲のことですね。
写真の画角は主に「レンズの焦点距離」によって判断します。しかし、センサーサイズによって焦点距離の補正も加わります。
具体的には下記のとおりです。
- フルサイズ→焦点距離×1.0
- APS-C→焦点距離×1.5
- フォーサーズ→焦点距離×2.0
例えば、焦点距離30mmのレンズをAPS-Cで使うと「30×1.5=45mm」となりますね。
ここで、焦点距離から画角を判断する目安は
- 35mm以下→広角
- 50mm前後→標準
- 85mm以上→望遠
なので30mmのレンズと言っても、フルサイズ用なら広角。APS-C用だと標準になるというわけです。
この画角の考え方はとても重要なのでしっかり覚えておきましょう。
理由2 使えるレンズが違う
センサーサイズが重要な理由2つ目。
センサーサイズによって使えるレンズが違います。
各センサーサイズ用のレンズがあるということですね。
例えば、フルサイズセンサーのカメラにAPS-C用レンズを着けるとします。
ちなみに着けるのは可能。しかし、大きいセンサーに対してレンズから入る光が小さいので、写真の周辺部に黒い部分(ケラレ)が出ます。
逆に、APS-Cセンサーのカメラにフルサイズ用レンズを着けるとどうでしょう。
実はこのパターンは普通に撮影できます。
ただ、画角はAPS-C用レンズと同じ「焦点距離×1.5」で考える必要があるのでご注意を。
ちなみに最近は『APS-Cクロップ』という、フルサイズ機でもAPS-Cレンズを使える機能もあったりします。(画角が狭まり、画素数も落ちます)
フルサイズ機を買うならあった方が良い機能ですね。
理由3 値段と大きさが違う
センサーサイズが重要な理由3つ目。
センサーが大きいと、カメラは大きく・重く・高くなります。
この辺りは皆さんご存知だと思うのでサラッとお話します。
重さに関しては、APS-Cとフルサイズで100〜200gほどの差があると思ってください。
しかも、レンズも加えると平気で300gとか望遠だと1kg近く差が出たりします。
1kgにもなるとさすがにヘビーですよね。
値段ですが、APS-C機が10〜20万なのに対し、フルサイズ機だと20〜50万。こだわったらそれ以上にもなります。
レンズもセンサーサイズが大きい方が高いので、さらに差が広がります。
予算や自分の体力も考えてセンサーサイズを決めるべきということですね。
ここまで、センサーサイズが重要である理由を3つお話しました。
- 性能が違う(画素数,画角,ダイナミックレンジ)
- 使えるレンズが違う
- 値段と重さが違う
続いて、センサーサイズのイメージを膨らませるために、違いを感じる場面を紹介します。
APS-Cとフルサイズの違いを感じる場面
APS-Cとフルサイズが主流
今、一眼カメラで主流のセンサーサイズは「APS-C」と「フルサイズ」です。
この2つでどっちにしようか悩んでいる方も多いはず。
でも、どんな場面でどっちがどう有利かをわかってないと選びようがありませんよね。
場面を知ることで、自分がカメラに何を求めているかが明確になってきます。
ということで、センサーサイズの違いを感じる場面を紹介します。
ちなみに、今回紹介しない『フォーサーズ』はどうかと言うと、軽量かつコンパクトでお値段もお手頃。
望遠に強いことから、野鳥撮影などに使うユーザーも結構います。
ただ、一眼ならではのボケが味わえないことやメーカーがオリンパスやパナソニックに限られていることから、主流ではない状況。
わかりやすくするため、今回の比較からは外しておくのでご了承ください。
場面1 ポートレートや逆光での撮影
ポートレート(人物撮影)
「子供の写真を一眼で撮ったけど、プロの写真と何か違う。」
それは、ボケ具合が違うのかもしれません。
ポートレートでは、背景をボカして撮影するのが主流。被写体を浮き上がらせて強調するためです。
そして、ボケ量で有利なのはフルサイズ。
よってポートレート中心の人はフルサイズを買えば良いのです。
と、言いたいところですが、ボケ量はセンサーサイズだけでなく、レンズの性能である「開放F値」にも左右されます。
開放F値の小さなレンズを使えばAPS-Cでもボケが得られるのです。
もちろんフルサイズなのに越したことはないですが、良いレンズがあればAPS-Cでも構いません。
つまり、ポートレート中心の人はフルサイズを使うか開放F値の小さなレンズを使えば良いということです。(両方使うとなお良い)
トリミング
「野鳥のベストショットが撮れた!でも距離があってちょっと小さいな。」
そんな時はトリミング。トリミングは小細工でもなんでもなく、写真を整えるための有効な手段です。
野生動物などは瞬発的に撮影するので、ある程度トリミングしないとやってられません。
しかし、画素数の低い写真をトリミングすると粗い写真になってしまいます。
フルサイズ機なら高画素だからトリミングに強い。
と思いきや、フルサイズにも低画素機があります。
あえて低画素にして1画素が受け取る光の量を増やし、感度を強くしているのです。
感度が強いカメラは夜景や星景撮影に強いですね。
話が逸れましたが、トリミングへの強さはフルサイズかどうかよりカメラの画素数を確認した方が良いということです。
逆光
「夕焼けのドラマティックな写真を撮りたい。でも逆光は白とび黒つぶれが心配。」
逆光では、コントラストのある印象的な写真が撮影できます。
しかし明暗差が大きく、白とび黒つぶれが起きやすいのが難点。
そんな場合はダイナミックレンジが広いカメラだと良いですね。
ダイナミックレンジはフルサイズ機の方が広いので、逆光撮影では有利と言えます。
あくまで有利なだけで、「APS-Cは逆光ムリ」というわけではないのでご安心を。
また、センサーの性能もどんどん上がっており、違いも小さくなってる気がします。
場面2 レンズの値段と豊富さ
「風景ばかり撮ってたけど、望遠で動物も撮ってみたい。よし、新しいレンズ買っちゃおう!」
という感じで、新しいレンズをいつか欲しくなります。
しかし、センサーサイズによって値段と豊富さが全然違うので注意が必要です。
基本的に、フルサイズ用レンズは種類が豊富だけど高い。
逆に、APS-C用レンズは比較的安いけど、種類が少ない。
また、解像感もあって歪みや色収差の対策がされた、良いレンズはフルサイズ用に多いです。
「何でAPS-Cに良いレンズ増やさないんだ!」って言われると、メーカーの戦略的なところではないでしょうか。
ただ最近は、純正以外のサードパーティレンズもたくさん出て、APS-Cの選択肢も増えています。(SIGMAやTAMRONなどですね)
レンズの自由度はどんどん上がると思いますが、どんなレンズが使えるか確認してカメラを決めるのは重要ですね。
場面3 大きさと重さの負担
「重さなんて我慢すれば何とかなる。」
筆者もフルサイズを買う時そう思っていました。
30代の男だしそれなりに力もあるかなと。
実際、「カメラ+レンズ2本」のセットで色んな場所へ行きましたが、持ち運びも撮影もそこまで負担ではありませんでした。
問題は望遠レンズを使い始めてからです。
望遠レンズは長くて重いのでバッグの占有量が大きいです。アウトドアや旅行では厄介な存在になるのは間違いないでしょう。
また、レンズ交換の煩わしさもあります。
小さいレンズならポーチからサッと出して両手で交換できますが、望遠レンズは「リュックから出して一旦置いて、、、」と大きいだけで1手間も2手間も増えて大変です。
APS-Cでも煩わしさはありますが、フルサイズとは比べ物になりません。
気軽に撮影を楽しみたい人はAPS-Cにするのが正解です。
3.センサーサイズを理解したカメラ選び
筆者オススメのカメラ選びパターン
長々とセンサーサイズの重要性や違いについてお話しましたが。
「メリットもデメリットもあって、結局どうすれば良いかわからない。」
という方もいると思います。
そんな方に向けて、カメラの選び方をパターン分けしてみました。
オススメのカメラも紹介しています。ちなみに全部SONY製。
このミラーレス時代、今後のことを考えてもSONY以外に選択肢はないと思います。
パターン1 かけ出しプロ志向
映像を仕事にしたいと考えている方は、あれこれ悩むよりフルサイズを選ぶのが良いです。
APS-Cを買っても撮影するたびに
「フルサイズだったらもっと良い写真だったんじゃないか?」
という疑問に駆られます。
レンズですが、キットレンズは買ってはいけません。キットレンズでは一眼の醍醐味であるボケや明るさは得られません。
筆者のオススメは単焦点レンズ2本セット。
「24mmの広角」と「70〜100mmの中望遠」で、開放F値は基本2.8以下。広角は2.0以下が望ましいです。
おすすめレンズの記事も下に貼っているので、後ほどご覧ください。
ということで、オススメのカメラを紹介します。
おすすめカメラ:α7iii
α7iiiはSONYを代表するフルサイズ機です。
何を隠そう、筆者が使っているカメラで、塾考に塾考を重ねてこのカメラに決めました。
α7シリーズには「R」と「S」と「無印」があり、それぞれの特徴は下記のようになっています。
- Rシリーズ→高画素機
- Sシリーズ→高感度機
- 無印→オールラウンダー機
これまでにお伝えした通り、フルサイズにも高画素機や高感度機があり、用途に応じて使い分けが可能です。
しかし、高画素にすれば感度が犠牲になるし、高感度だと画素数が犠牲になります。
何でもオールラウンドにこなしたければ無印が間違いなしです。
ただ、動画撮影が中心になるなら話は別です。動画撮影用のカメラは後ほど紹介するのでそちらをご覧ください。
ちなみに、2021年中には『α7Ⅳ』が発売されるだろうと言われていますが、値段はおそらく倍近くになると思いますし、α7iiiの性能があれば無理に最新機を買う必要はないと思います。
ちなみに、α7iiiについて詳しく書いた記事も用意してるので、良ければご覧ください。
パターン2 手軽さ趣味志向
趣味でカメラを始めるという方はAPS-C機で全く問題ありません。
「でも、性能はフルサイズが良いんでしょ?」
と思う方もいるかもしれませんが、「比べればそう」という感じです。
筆者はAPS-Cから始めて、次にフルサイズを買いましたが、今でも手軽さ優先でAPS-Cを使ったりします。(ここぞという時はフルサイズですが)
ただ、APS-C機は値段を抑えるために「無いと困る機能が無い」場合もあるので、安心できるカメラを筆者が紹介します。
おすすめカメラ:α6600
α6600はSONYのAPS-C機では新しめの機種です。
そして、このα6600にはこんな機能があります。
- 手ブレ補正
- 大容量バッテリー
- 4k24fps撮影
- 180度回転モニター
- HLG撮影
この中で重要なのが『手ブレ補正』と『大容量バッテリー』です。
手ブレ補正で撮影の難易度が劇的に変わるし、大容量バッテリーが無いと予備が必須になります。
実は、筆者が持っている「α6300」にはどちらも搭載されておらず、同じく所有する「α7iii」には搭載されています。
なので筆者は、この2つの重要性を痛いほどよく分かっているし、これからカメラを買う人にはこの2つに注意してと声を大にして伝えたいのです。
逆に言えば、α6600は安心してオススメできるAPS-C機ですね。
オススメのレンズは下記記事で紹介しています。
パターン3 YouTuber動画志向
YouTubeやVlogなど、動画を撮影する人は『動画に向いたカメラ』を使いましょう。
ひとこと動画と言っても設定がたくさんあり、ちゃんと確認しないと撮りたい映像は撮れません。
ということで、確認が必要なのは次の項目です。
- 解像度(フルHD,4K)
- フレームレート(24,30,60,120fps)
- 記録方式(全画素読み出し)
解像度は画素数による違いですね。
最近では4K動画を撮れて当たり前という感じになっています。
『フルHD』が横1920×縦1080=200万画素で、『4K』は横3840×2160=800万画素。
カメラのセンサー自体は数千万画素あるので、意外と少ないですよね。
フレームレートは1秒あたりの記録枚数です。fpsという単位はフィルムパーセカンドなのでそのままですね。
数値が高いほど滑らかな動きになりますが、容量も大きくなります。
ちなみに、120fpsはスローモーション映像に使用するフレームレートですね。
最後に記録方式。
先ほど少し触れましたが、センサーにある画素数は、動画を作れる量よりずっと多いです。
そのため、画素数を減らす処理をしなければならず、センサーのどこをどう使って減らすか決めなければなりません。
方法としてはセンサー全体を使う「全画素読み出し」や、必要最低限の画素を使う「ドットバイドット」、複数の画素を1画素として扱う「ピクセルビニング」などがあり、カメラによって違います。
この方法によって画角が変わるので注意が必要です。
『全画素読み出し』なら写真と同じ画角で画質も良いので、全画素読み出しで4K撮影可能かどうかは確認すべきでしょう。
おすすめカメラ:α6600
APS-C機で動画を撮るならα6600が良いです。
全画素読み出しの4k24fpsが撮影でき、30fpsになると画角が狭まります。
筆者の「α7iii」も4k全画素読み出しは24fpsまでです。もちろん、フルHDなら60fpsや120fpsも撮影できます。
また、手ブレ補正やバッテリー容量も備えていて動画撮影にピッタリという感じです。
おすすめカメラ:α7siii
2021年5月現在の一眼カメラで、最高峰の動画性能と言われるのがα7siii。
全画素読み出しで4K60fpsが撮影可能だし、画角が10%狭まりますが4K120fpsも撮影可能。
もちろん写真も撮れますが、画素数は1210万画素なので解像度は低いです。
「俺は動画で食っていく。」という人はこのカメラでしょう。
レンズについては同じフルサイズの「α7iiiにオススメのレンズ」で問題ないですが、Vlog用ならなるべくコンパクトなレンズを選ぶと良いと思います。
以上、今回はセンサーサイズからカメラ選びのパターンまで紹介しました。
長い記事でしたが、きっと皆さんのカメラ選びに役立つと確信しています。
ご覧いただきありがとうございました。
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