今回はZV-E1とFX30の比較をやっていきます。
ZV-E1とFX30は「センサーサイズ」や「画素数」など違う部分はかなり多いです。
ただ値段は近くてどちらも動画向けなので、どっちを買うか迷う方は多いと思います。
それぞれに強みがあるので、用途や好みによって選ぶカメラが変わりそうです。
なので今回は、ZV-E1とFX30の性能比較をやっていくのでカメラ選びの参考にしていただければと思います。
ちなみに今回の内容は動画にもしてあるので、見やすい方でご覧ください。
ZV-E1とFX30のスペック比較
それではZV-E1とFX30のスペックから比較していきます。
センサーサイズ
まず一番の違いと言えそうなのがセンサーサイズです。
ZV-E1が「フルサイズ」でFX30が「APS-C」なので、センサーの面積は2倍以上違います。
ZV-E1はフルサイズセンサーに1,210万画素が搭載されていて、1,010万画素が動画で使われます。
FX30はAPS-Cセンサーに2,600万画素搭載されていて、2,010万画素が動画で使われます。
暗所性能の目安である「最大常用ISO感度」ですが、ZV-E1はフルサイズかつ画素数は少ないのでISO102,400あります。
FX30はAPS-Cかつ画素数が多いのでISO32,000となっています。
この暗所性能と画素数が画質に与える影響というのは後ほど詳しくお話します。
画素数はFX30が上、暗所性能はZV-E1が上
手ブレ補正
そして手ブレ補正機能については両方とも光学式補正が搭載されています。
さらにZV-E1には電子式補正も併用した「ダイナミックアクティブモード」もあります。
ということで、手ブレ補正性能の比較も行いました。
映像で見ていただいた方が良いですが、解説もしておきます。
フルサイズ用レンズの「SELP1635G」を使って、シューティンググリップ片手持ちでラフに歩いてブレの違いを確認します。
画角が違うとブレの目立ち方が違うので次の通り調整しました。
- ZV-E1+Actで35mm
- FX30+Actで23mm
- ZV-E1+D.Actで27mm
この焦点距離で撮れば換算39mmの同じ画角で撮影できます。
ブレを目立たせるためにあえて狭い画角で撮影しましたが、広い画角の方がブレを抑えられます。
ということで結果ですが、次の通りになりました。
- 1. ZV-E1+D.Act
- 2. FX30+Act
- 3. ZV-E1+Act
ブレのなさはダントツでZV-E1のDアクティブで、通常のアクティブ比較では若干FX30の方が良かったです。
手ブレ補正はZV-E1のDアクティブが優秀
解像度とフレームレート
使える解像度とフレームレートですが、どちらも4K120PとFHD240Pまで使うことができます。
4K120Pについてはどちらも画角が狭くなりますが、クロップ倍率がZV-E1は1.1倍ほどでFX30は1.6倍ほどです。
個人的には1.6倍クロップのおかげで400mmのレンズが1,000mmほどで使えるので動物撮影で重宝しています。
ただ出来るだけ広く撮りたい人には痛手かもしれません。
フォーマット
フォーマットについてはどちらも次の3つが使えます。
- XAVC S
- XAVC HS
- XAVC SI
長回し用(XAVC HS)やガッツリ編集する作品用(XAVC SI)という感じで使い分けすると良いと思います。
クロマとbit深度
クロマサブサンプリングとbit深度については、ZV-E1とFX30どちらも「4:2:2 10bit」で撮影できます。
4:2:2 10bitならLogのカラーグレーディングにも安心ですし、撮って出しなら「4:2:0 8bit」を使っても良いと思います。
重さ
重さについてはZV-E1はフルサイズとしては超軽量の483gでFX30はAPS-Cとしては重めの646gです。
APS-C用レンズは軽いものが多いので、合計の重さは案外変わらないです。
例えばZV-E1に広角ズームのSELP1635Gをつけると836gで、FX30に同じく広角ズームのSELP1020Gをつけると824gになります。
本体の重さは違うけどレンズと合わせると同じくらい
ZV-E1とFX30の画質比較
ここまで基本的なスペックを比較してきたので、続いて画質比較をやっていきます。
画質の違いとして
- 解像感
- ノイズ
- ローリングシャッター歪み
の3つを比較します。
解像感
まずは解像感からです。
スペック比較でもお伝えしたとおりZV-E1の動画の画素数は1,010万で、FX30は2,010万です。
この画素数から「オーバーサンプリング」という処理がされて4K映像が作られます。
これによって画素数が多いFX30の方が解像感が高くなりそうですが、どうなるのか確認してみたいと思います。
先ほどのアクティブモード比較と同じく、SELP1635Gを使って文字と画像を撮影して拡大比較します。
設定はXAVC SI 4K24Pでノイズが載らないようにISO100で撮影します。
焦点距離はZV-E1で30mm、FX30は20mmで撮影します。
まず先に文字ですが、FX30の方が黒色が濃くて輪郭もハッキリしてシャープな印象があります。
ZV-E1の方は輪郭が少しぼんやりしているようにも感じます。
続いて画像になります。
これは建物の外壁と窓の部分なんですが、FX30はインクのドットまでしっかり解像しているのが分かります。
ZV-E1の方はFX30ほどの解像感はなくて少し滑らかになった感じがします。
FX30は少しディテールが強調され過ぎていると感じる人もいるかもしれませんが、解像感はFX30の方が高いということは言えそうです。
解像感はFX30の方が高い
ノイズ
続いてノイズの比較です。
一般的にノイズが少ない方が映像の画質は良いです。
最大常用ISO感度の高いZV-E1の方がノイズを抑えられそうですが実際のところはどうなんでしょうか。
ノイズは映像の暗い部分に潜んでいるので、ボディキャップをつけた状態で撮影して編集で明るくしてノイズを確認します。
あとFX30とZV-E1には「デュアルベースISO」も搭載されているので、S-Log3でのノイズの具合を確認します。
デュアルベースISOの詳細については過去の記事で詳しく解説しています。
ということで結果です。
まずISO800ですが、既にZV-E1の方がノイズが少ないです。
暗所性能の高さは低感度でも発揮されるようですね。
続いてISO2,500です。
FX30の2つめのベースISOなのでノイズ量が逆転しました。
この後ISO10,000まではZV-E1のノイズはかなり多くなりました。
そしてISO12,800です。
ZV-E1の2つめのベースISOなのでZV-E1はISO800とほぼ変わらないレベルまでノイズが減りました。
FX30はISO2,500から離れているのでノイズは多い状態です。
暗所性能については、中途半端なISO感度に設定しない限りZV-E1の方が有利のようです。
ノイズ耐性はZV-E1の方が圧倒的に高い
ローリングシャッター歪み
続いてローリングシャッター歪みです。
素早い被写体を撮ったりカメラを素早く動かした時に発生するローリングシャッター歪みというものがあります。
映像の印象を大きく損ねる可能性があり、動画性能として注目されるポイントなので比較をします。
確認方法ですが、道路を走る車を横から撮ります。
歪みが出ていれば車全体が歪みますが、注目するのはタイヤの形です。本来円形のものが歪むので違いが特にわかりやすいです。
モーションブラーが出るとわかりにくいのでSSは1/1000秒にして撮影して、同じくらいのスピードの車をピックアップして比較します。
ということでこちらがキャプチャした画像です。
FX30(上)はタイヤが斜めに変形しているように見えて歪んでいるのがよくわかります。
それに対してZV-E1は全く歪んでないわけではないですが、かなり優秀だと思います。
これを映像で見る訳なのでZV-E1では全く分からないレベルだろうと思います。
FX30も他のカメラと比べて特に劣っているわけではないので、ZV-E1の歪み耐性が優秀と思ってもらえれば良いと思います。
歪み耐性は圧倒的にZV-E1が有利
ZV-E1のメリット
ここまで画質比較をやってきたので、続いてZV-E1のメリットについてお話します。
ZV-E1のメリットは
- 暗所性能
- AF性能
- ボケ
- 写真性能
の4つです
暗所性能
先ほどの比較の通りZV-E1の暗所性能は特に優秀です。
そして2つめのベースISO感度を積極的に使うことでF4レンズで夜景が撮れるというのはかなりの強みです。
夜景撮影用に明るい単焦点レンズを買う必要が無いので費用を抑えられますし、1本で昼も夜も撮れてレンズ交換の手間もいらなくなりそうです。
あと低感度の状態でもノイズが少ないので、色のりが良かったりツヤ感のある映像になりやすいとも思います。
Bit深度やクロマサブサンプリングとは別の部分で粗さが出ないので、カラーグレーディングもしやすい感じがします。
FX30についてはF4レンズで夜景撮影などは厳しいですが、「SEL15F14G」や「SEL11F18」のような明るいレンズを使えば夜景撮影ができます。
AF性能
2つめのメリットはAF性能です。
ZV-E1にはAIAFが搭載されているので、被写体認識と追従性能がとても良いです。
α7IVとFX30を比べたときにAF性能の違いはそこまで感じないんですが、ZV-E1はやっぱり違うなという感じがします。
認識対象も多くなっているので、色んな使い方ができると思います。
ボケ
メリット3つめはボケです。
これはシンプルにAPS-Cとフルサイズの違いなんですが、フルサイズの方がボケます。
具体的には1段から1.3段分くらいの差があります。
APS-C機にF1.4のレンズをつけたのとフルサイズのF2のボケが同じくらいだったり、APS-CのF2.8のボケがフルサイズならF4で出せるということになります。
ボケを活かした表現がしたくてフルサイズを選ぶ方も多いと思うので、これはやっぱり強みかなと思います。
写真性能
メリット4つめは写真性能です。
FX30もZV-E1もどちらもメカシャッターが無くてファインダーも無いというのは共通なんですが、写真性能は結構違います。
ZV-E1は1秒10枚の連写ができるのに対してFX30はできなかったり、ローリングシャッター歪みもZV-E1の方が有利です。
RAWで撮る場合はZV-E1なら「圧縮RAW」「ロスレス圧縮RAW」「非圧縮RAW」の三種類から選ぶこともできます。
画素数的にはFX30の方が多いですが、ZV-E1の1210万画素はA3印刷したり強めのトリミングをしなければ十分だと思います。
ZV-E1の画素数でもSNS投稿などには十分すぎるくらいです。
ZV-E1の暗所性能は写真でも活きるので、写真用として買う方も結構多いと思います。
ZV-E1のメリットは大まかにはこんな感じですが、協調制御手ぶれ補正が搭載されていたり、美肌補正や商品レビュー設定などのVLOG向け機能やマイクに指向性があるのも強みだと思います。
スチル機として性能や操作性が上のα7IVとの比較もしています。
FX30のメリット
ここまでZV-E1のメリットをお話したので、続いてFX30のメリットをお話します。
FX30のメリットは
- 空冷ファン
- 操作性
- XLRユニット
- ProResRAW
の4つです。
空冷ファン
FX30には冷却用のファンが内蔵されています。
ミラーレス一眼カメラで長時間撮影すると起こる熱停止を冷却ファンを搭載することで避けられるようにしているんです。
ZV-E1は一般的なミラーレスカメラと同様に冷却ファンを搭載していません。
長時間撮影する場合は次の対策を検討してみてください。
- 低ビットレート
- 低フレームレート
- 自動電源OFF温度「高」
- 背面モニターを開く
- 外部給電(USB-C等)しない
- 外付けファンなど
自動電源OFF温度を「高」に設定してビットレートを抑え、背面モニターを開くだけでもかなり改善します。
ただ夏場の直射日光下で長時間撮影するような場合はやはりFX30が安心です。
冷却ファンの設定は「オート」「最小」「記録時OFF」の3つから選ぶことができます。
ファンの音は静かで基本的に気にならないですが、出来るだけ抑えたいという時は最小や記録時OFFにすると良いと思います。
操作性
メリット2つめは操作性です。
ZV-E1は軽量化優先のボタン配置や形状なので、操作性が良いとは言えません。
それに対してFX30はAPS-Cとしては重めの代わりに操作性がかなり良いです。
グリップの形状がZV-E1はフラットなのに対して、FX30は中指の上に引っ掛かりがあってズレにくいです。
ZV-E1には無い「フロントダイヤル」もあるので、「リアダイヤル」と「コントロールホイール」を使えばF値・SS・ISO感度をそれぞれ直感的に操作することができます。
あと個人的に大きいのは液晶モニターの精細さです。
- ZV-E1のモニター:103万ドット
- FX30のモニター:236万ドット
ZV-E1だとピント合わせができないとかそういう話ではないんですが、撮影した映像のチェックをするとFX30の方が圧倒的に綺麗に映ると思います。
もう1つ大きな違いとしてカードスロットが2つあるということです。
カード2つに同時記録することで、ミスや不具合があった時のためのバックアップができたり、シンプルに1つのカードを使い終わったら次のカードに記録というのもできます。
熱停止同様、失敗できない場面での撮影をするならダブルスロットがあるFX30の方が安心だと思います。
ただそういうミスや不具合が実際に起きるかというとそう起こるものではないとも思います。
XLRユニット
メリット3つめはXLRユニットです。
FX30では「XLRハンドルユニット」をセット購入できます。
XLR端子というものがついていて、そこからXLRケーブルを経由してマイクに接続することができます。
XLR対応のマイクは種類も多くて高品質なものが多いですし、ケーブルを延長して良い位置にセッティングするということもできるので、音にこだわりたい方はセット購入しておいた方が良いと思います。
ZV-E1も別途XLRアダプターを購入すれば同じような使い方ができますが、FX30と違ってハンドル型ではありません。
逆にそこまで大掛かりにしたくない場合はマルチインターフェースシュー接続の外部マイクを使うと良いと思いますし、これで十分という方も多いと思います。
ProResRAW
メリット4つめはProResRAWです。
FX30はATOMOS製のレコーダーを使うことでProResRAWフォーマットでの収録が可能です。
ProResRAWは撮影時点での加工がほぼされていないので圧倒的に情報量が多くて、高画質かつ編集耐性も高いフォーマットです。
詳しい内容は以前のFX30のレビューでお話しているのでそちらを見ていただければと思います。
映像の質に特にこだわりたい方は選択肢に入れて良いかなと思います。ただ撮影や編集の知識、機材が必要なのでハードルは高いです。
ZV-E1とFX30どっちが買い?
ここまでFX30のメリットをお話したので、最後にどっちを選ぶべきかについてお話します。
値段はそんなに大きくは変わらないんですが、性能や仕様は大きく違うように思います。
シンプルにまとめると
フルサイズの性能や高い暗所性能を手軽に使いたいならZV-E1。できるだけリスクを抑えて操作性も良くしたいならFX30。
尖った性能のZV-E1と安心感のFX30という感じです。
頻繁に長時間撮影するようならやはりFX30が良いですし、数分の撮影を繰り返すような使い方だったりボケを活かした表現もしたいとなったらZV-E1が良いのかなとも思います。
どちらもとても良いカメラではありますが、当然メリットとデメリットがあります。
自分の用途と照らし合わせてカメラを選んでもらえれば良いかなと思います。
ZV-E1の情報をまとめた1ヶ月レビュー記事もあるのでよければ参考にしてみてください。
ZV-E10との比較記事もあるのでよければどうぞ。
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