こんにちはともです。
今回はFX30のProResRAW撮影についてお話していきます。
FX30はATOMOSの外部レコーダーを使うことでProResRAWで撮影することができます。
ProResRAWはファイル圧縮をかなり抑えた動画コーデックなので、高画質かつ編集の劣化を抑えることができます。
僕も最近は作品撮りで使うようになってその良さを実感しているんですが、導入する前に知っておくべきことが結構あります。
なので今回は、ProResRAWが気になっている人や導入するか迷っている人に向けてメリットとデメリットをお伝えします。
それを踏まえて最後には、必要な機材も紹介するので最後までぜひご覧ください。
ProResRAWって何?
メリット・デメリットの前に、そもそもProResRAWとは何なのかをお伝えしておきます。
ProResRAWは先ほどお伝えした通り動画コーデックの1種です。
コーデックというのは圧縮方法とか圧縮形式と捉えてもらえればOKで、コーデックによって膨大なファイルサイズの動画をコンパクトで使いやすいサイズにできています。
よく使われるものだと「H.264」や「H.265」などがあって、H.264は特に汎用性が高くて色んなソフトやメディアで使えたり、H.265は高圧縮でファイルサイズを抑えることができる代わりに、動画編集で重くなりやすいという特徴があったりします。
つまり画質や汎用性、編集のしやすさなどでコーデックを選ぶわけです。
そんなコーデックの中にProResコーデックというのもあります。
ProResはAppleが開発したコーデックで、「ProRes422」や「ProResLT」など数種類あり、圧縮が少なく多様な編集に向いているので「中間コーデック」と言われています。
今回紹介するProResRAWの「RAW」というのは「生」という意味で、撮影でカメラのセンサーが受け取った情報がほぼそのまま記録されます。
そのままの情報だからこそ、これから紹介するメリットとデメリットが出てくることになります。
ProResRAWはATOMOSレコーダーへの外部出力が基本となりますが、それもできるカメラが限られています。(Nikon Z9はカメラ内部記録が可能のようで羨ましいです)
SONY機の代表的なところだと「α7SIII」や「FX3」、そして「FX30」がRAW出力可能となっています。
ProResRAWのメリット
ここまでProResRAWとは何かについてお話したので、続いてProResRAWのメリットについてお話します。
お伝えするメリットは次の3つです
- 編集が早くて快適
- 編集の劣化を抑えられる
- WBを後で調整できる
1つずつお話していきます。
編集が早くて快適
ProResRAWのメリット1つ目は編集でPCが重くなりにくいことです。
冒頭でお話したとおり、動画は通常、ファイルサイズを抑えるためにかなり強い圧縮がかけられています。
動画を視聴したり編集するには圧縮された状態から「デコード」つまり解凍する必要があります。
この解凍作業でPCに負荷がかかるので、視聴だけなら特段問題ないですが、編集まですると重くて作業スピードがかなり落ちてしまいます。
圧縮率の高いH.265コーデックが編集で重くなるのはこれが原因です。
それに対してProResRAWは圧縮をかなり抑えたコーデックで、デコードの手間がない分編集もサクサクできるというわけです。
編集の快適さについてはProResRAWだけでなく、ProResをはじめ中間コーデックの強みでもあります。
編集の劣化を抑えられる
ProResRAWのメリット2つ目は編集での画質劣化を抑えられることです。
圧縮された映像は視聴する分には画質の劣化を感じにくいですが、その映像を素材にしてカット編集したり色を調整したりすると画質が劣化していきます。
一言で圧縮と言っても、色んな圧縮方法が組み合わされているんですが、中には映像のフレームを間引く方法もあります。
これは「フレーム間圧縮」と言って、AとDのフレームはしっかり記録するけど、BとCは記録せずAやDとの違いだけを記録するというやり方です。
一連で見ればBとCの画質も気になりませんが、カット編集でAやDが切られたり、さらにエンコードも加わったりすると、画質の劣化はどんどん目立っていきます。
あと、「bit深度」や「クロマサブサンプリング」によっては、色の劣化も起こしやすかったりするので、映像素材は圧縮されていない豊富な情報を持っているに越したことはないわけです。
ProResRAWはフレーム間圧縮されていない、いわゆるALL-I(オールイントラ)の素材ですし、12bitの緻密な色情報を持っています。
クロマサブサンプリングについての情報は調べても出てこないのですが、当然高圧縮の4:2:0ではないでしょうし、高品質の4:2:2〜4:4:4と同等と考えて良いです。
WBを後から調整できる
ProRes RAWのメリット3つ目はWB(ホワイトバランス)を後から調整しても色の劣化が起こらないことです。
通常は撮影時点でWBを調整する必要がありますが、ProResRAWならメタデータが焼き付いていないので、編集でWBを調整しても問題ありません。
イメージ的には通常の編集だとカラーフィルターの上にさらにフィルターを載せる感じですが、ProResRAWの編集ならカラーフィルターを交換できるようなイメージです。
屋外撮影だと、「晴れか曇りか」「日向か影か」でWB調整がその都度必要なので、この調整を編集でゆっくりできるのは良いポイントです。
ProResRAWの良いところをまとめると、編集の負荷や画質の劣化が少なく、柔軟性の高い映像素材が手に入ることと言えます。
ProResRAWのデメリット
ここまでProResRAWのメリットについてお話してきたので、続いてデメリットについてお話します。
ProResRAWのデメリットは大きく次の3つです。
- ファイルサイズが大きい
- 外部レコーダーの負担が大きい
- 後処理が必要
では1つずつ解説していきます。
ファイルサイズが大きい
まず1つ目にファイルサイズが大きいことです。
一般的な動画ファイルと比べると、2倍とか3倍というレベルではなく5~10倍のサイズになると思っておいた方が良いです。
試しにFX30で4K24P(4672×2628px)で10秒撮影したところ1GBほどのサイズになったので、1秒あたり100MB。
ビットレートだと8をかけて800Mbpsという計算になります。
2〜3時間の撮影で1TB消費することになりますね。
H.264コーデックのMP4ファイルなら50Mbpsや100Mbpsで撮れるのでやはり10倍ほどで考える必要がありそうです。
ProResRAWで適当に長回しするととんでもないサイズになるので、作品撮りなどに絞って使うのが良さそうです。
外部レコーダーの負担
ProResRAWのデメリット2つ目は外部レコーダーの負担が大きいことです。
負担というのは大きさや重さに加えて費用負担も含んでいます。
ATOMOSのレコーダーはモニターとしての役割もあるのでそこはメリットなんですが、撮影や持ち運びで負担になるのは間違い無いです。
レコーダー本体はNINJA Vで320gですが、これにバッテリーやSSDなんかも載ってきますし、カメラと繋ぐためのケーブルやリグを組む必要もあるかもしれません。
FX30とレンズを合わせて1kg未満に抑えても、ProResRAWで撮るための機材を加えると簡単に2~3kgになると思います。
レコーダーやリグを揃えるには安くて15万くらいはかかると思うので、この費用の負担も大きいです。
後ほど必要な機材の紹介もするので、そちらを見ていただけるとイメージが湧きやすいと思います。
あと、レコーダーには空冷ファンがついているんですが、この音が結構大きくてマイクの近くに配置すると音を拾ってしまいます。
リグを組む場合でもマイクとレコーダーの距離は意識したほうが良いですし、音は別で録ることも考えたほうが良いかもしれません。
後処理が必要
ProResRAWのデメリット3つ目は編集で色んな処理が必要なことです。
ProResRAWはカメラによる映像処理がされてないのが良いところなんですが、逆に必要な処理がされてないとも考えられます。
具体的には、「ノイズリダクション」や「レンズ補正」などもかかっていません。
あと、クロップの関係もあってかFX30の動画用手ぶれ補正アクティブモードも使えません。
ただ、ノイズについては露出オーバーで撮ることでかなり抑えることができます。
ProResRAWはS-Log3で撮影することになるので、露出の考え方はLog撮影の解説記事をご覧いただければと思います。
編集ソフトのノイズ除去は有償のプラグインが必要になったりもするので、撮影時点でノイズを抑える努力をしましょう。
また、ProResRAWは「Final Cut Pro」や「Premiere Pro」での編集はできますが「DaVinci Resolve」では編集できません。
DaVinCi Resolveを使う場合は「RAWconvertor」というソフトで「CinemaDNG」に変換するというフローをとる方が多いようです。
ちなみにPremiereProで編集する場合もちょっとした設定が必要で、慣れれば簡単ですが、知らないと編集が全く進みません。
記事もあるので参考にしてみてください。
手ぶれ補正についてはアクティブモードが使えないので、カタリストブラウズに頼りたいところですが、ジャイロデータが記録されないのでこれも使えません。
ジンバルを使う場合はカメラにレコーダーを載せられないので、ジンバルにアームをつけたりする必要がありそうです。
それもなかなか大変なので、動きのあるカットはXAVC SIのカメラ内部記録にして、フィックスなどはProResRAWで撮るというような役割分担をしても良いかもしれません。
ProResRAWのデメリットをまとめると、ファイルサイズが大きくて、レコーダーの大きさ的にも費用的にも負担がある。あと、編集での処理作業が増えるといった感じです。
必要な機材
ここまでProResRAWのデメリットについてお話したので最後に必要な機材についてお話します。
FX30でProResRAW収録するのに必要な機材を解説していきます。
全部必要というわけではないので、使い方に応じて選んでみてください。
ということで機材は次のとおりです。
- レコーダー
- SSD
- バッテリー
- ケーブル
- リグ
1つずつ紹介していきます。
レコーダー
まず一番大事なレコーダーですが、FX30との組み合わせでProResRAW収録できるものは3機種あります。
- NINJA V
- NINJA V+
- SHOGUN CONNECT
結論、一番のオススメはNINJA V+です。
僕が使っているのは一番安価なNINJA Vですが、4K24Pと4K30P収録しか出来ず、4K60P収録はNINJA V+とSHOGUN CONNECTしかできません。
FX3ならNINJA Vでも4K60P収録できるのですが、仕様が違うようです。
ProResRAW収録は手ぶれとの戦いでもあるので、4K60Pがあれば24Pや30Pに変換したスロー映像でブレをある程度目立たなくできます。
ちなみにATOMOSレコーダーでは、ProResRAW以外にもProRes422やLTなどのProResコーデックが使えるんですが、こちらはNINJA Vでも4K60P出力可能ですし、アクティブモードも有効です。
ProResRAW以外のコーデックも圧縮が少なくて編集に強いので、ProRes422などを活用するならNINJA Vでも良いかもしれません。
そして、値段の目安は次のとおりです。
- NINJA V → 8万ほど
- NINJA V+ → 14万ほど
- SHOGUN CONNECT → 22万ほど
僕はしばらくはNINJA Vの24Pで撮影しますが、どこかのタイミングで60Pも撮れるNINJA V+も導入したいなと思っているところです。
これから導入するなら高額にはなりますがNINJA V+が間違いないように思います。
SSD
続いてSSDです。
ATOMOSレコーダーでは映像をSSDに記録します。PCの中に入ってたり外付けするあのSSDです。
使えるSSDはATOMOSのHPから確認することができますが、SSDによって値段がかなり違います。
下記リンクのドロップダウンからレコーダーを選ぶと使えるSSDがわかります。
僕がNINJA Vで使っているのは中でも安価な「Sandisk Ultra3D」なんですが、NINJA V+のProResRAW4K60Pにも対応しているようです。
これを「マスターキャディ」という保護ケースに入れてレコーダーに接続すれば記録できます。マスターキャディは本体に1つだけ付いてますが、後々複数必要になると思います。
バッテリー
続いてバッテリーです。
レコーダー本体にはACアダプターはありますが、バッテリーはついていません。
屋外撮影するならバッテリーを購入する必要があります。
バッテリーの考え方は2パターンあるのでそれぞれ紹介します。
1つ目はATOMOS製の小型バッテリーをつけることです。
できるだけコンパクトにしたいならこのバッテリーをつけることになりますが、背面に結構飛び出るので、カメラ本体や他の機材と干渉しないよう注意してください。
「アクセサリーキット」を購入すればバッテリーやバッテリーチャージャー、ケースや画面の保護フィルムなんかもついているので、あれこれ手を出すよりこれを買う方が手っ取り早いです。
2つ目はVマウントバッテリーで給電することです。
Vマウントバッテリーは業務用の大型バッテリーで、Vマウントでいろんな機材に装着することができます。
Vバッテリーはなかなか重いので、リグを結構しっかり目に組む必要があってあまり手を出したくないところだとは思います。
ただFX30のバッテリーの持ちが悪いことも考えると、Vバッテリーでカメラとレコーダー両方に給電して長時間撮影に耐えられるようにするというのも大いにありです。
僕は「MomanのVバッテリー」を使っていますが、UCB-A、USB-C、D-tapに対応していて使いやすいです。
RAW撮影だけでなく、長時間収録などもトータルで考えて給電方法を決めると良いと思います。
ケーブル
続いてケーブルです。
レコーダーとカメラは「HDMIケーブル」で繋ぎます。
HDMIケーブルにはいくつか種類がありますがFX30とATOMOSレコーダーはAタイプ、いわゆるフルHDMIで繋ぎます。
あとHDMIには「伝送速度」というのもあって、速度によっては4K60Pを送れなかったりします。
プレミアムハイスピードという規格を選べばOKで、Ver2.0と書かれてたりもします。
あとVバッテリーからの給電ケーブルも用意しておいてください。この辺りはD-tap以外なら家電量販店でも売ってると思います。
リグ
最後にリグです。
レコーダーやマイク、バッテリーなど様々な機材をカメラにつけるにはリグが必要です。
リグを組んでない人は「なんであんなにゴツいリグを組むんだろう」と思うかもしれませんが、組んでいくと理由がわかってきます。
レコーダーを付けるだけならレコーダーの底にネジ穴があるので、「コールドシュー用のアダプター」さえあれば良いです。
ただ重心が上がってバランスをとりづらくなるので、サイドハンドルをつけると安定しやすくなります。
サイドハンドルはケージにつけるか、ケージがなくてもFX30側面のネジ穴に付ければ良いですが、1点どめになるのでちょっと心もとないです。
僕はSmallRigの「ハーフケージ」と2点どめの「サイドハンドル」を使っています。
リグを最小に抑えるならこのくらいで良いように思いますが、XLRハンドルユニットを使う場合はその上にレコーダーを載せる必要があります。
オススメは「XLRハンドルユニット用の延長バー」をつけて「NATOレールクランプ」をつけることです。
NATOレールならレコーダーを前後にスライドして位置の調整ができますし、ハンドルが長くなって持ちやすくもなります。
これでXLRハンドルユニットの上にレコーダーを載せられましたが、重心がさらに上がってバランスが取りづらいので、「体で支えられると良いな」と感じてくるかもしれません。
支えるのは肩だったり胸のあたりだったりしますが、いずれにしろロッドを伸ばすことになります。
僕は「ショルダーリグ」のキットを使って、この中のデュアルハンドルは状況に応じてつけたり外したりしています。
これで安定しそうな気がしますが、重心が後ろにないのでまだ安定しないです。
肩で支えるというより腕で支えたままになると思います。
ここにVバッテリーを載せたりすれば重心が後ろに下がって安定しますし、カメラやレコーダーへの給電もできるようになります。
以上の機材は僕が実際に使っているものになります。あとマニュアルフォーカスを使う場合はフォローフォーカスも使ってみると良いとかもしれません。
ここまでやれば、ガッチリした装備になるんですがミラーレス一眼のコンパクトさを完全に損なう運用方法なので、用途や求めるクオリティだけでなく、自分の体力とも相談して考えてみてください。
ほぼ撮って出しのような状態ならProResRAWは要らないし、ガッツリ編集するならProResRAWはとても心強い映像素材になります。
今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
コメント